対象外でも恋咲く
「恋はしたわよね?」


「しましたけど……」


占い師の予言通り、恋はした。だけど、振られた。


「実るとは言ってはなかったけど、この恋によって得たものもあるでしょ?」


確かに得たものはあった。イケメンに対する偏見はなくなったし、好きだからと無理に誘うことはよくないことにも気付いた。

それを考えると弘人に恋したことは無駄ではなかった。


「そうですね。言われてみればそうかも」


「大丈夫! あなたはあと1回恋をする。その恋の行方はね……」


占い師は勿体ぶるようにして、言葉を続けないで水晶玉を何度も撫でる。それに合わせてふくろうが「ホーホー」と鳴く。


そして、やっと続きを伝えようと口を開いたとき……

紗和の背後にあったドアが開く。夜になって、冷えてきていたので、爽やかな風が店内に入ってきた。


「あれ? 菊池さん?」


「えっ?」


紗和は自分の名前を呼ばれて振り返った。ドアを開けて入ってきたのは隣の営業二課の男性社員だった。
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