対象外でも恋咲く
イケメンだけど、恋愛対象外として見てきた男だ。

ブンブンと首を横に振る。

あんな胡散臭そうな男に恋をするなんて、あり得ない。紗和は占い師の言葉を信じないようにした。


* * *


「あー、疲れた」


高畠瞳(たかはたひとみ)は会社を出て、肩に手を当てて首を回す。肩はガチガチに固くなっていた。

瞳が出てきた会社は総合電機メーカーの本社ビルで、瞳もまた弘人と紗和と同じ営業部の営業1課に所属している。

ひと昔前は花の金曜日と言われていた金曜の夜、瞳は残業をしていた。他にも残業する社員はいたが、瞳が一番最後まで残っていて、時刻は9時を過ぎたところである。

月曜日の午前中に見積書と資料を得意先の商社に持っていくという課長にそれらの作成を夕方に頼まれた。

ひそかに課長へ憧れを抱いている瞳は即承諾をしたが、他にやることがあり、全部の業務を終わらせた時にフロア内に誰もいないことに気付いた。

仕事を頼んだ課長に至っては……今夜は子供の誕生日パーティがあるからと定時に上がっていた。
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