対象外でも恋咲く
自分にないものに惹かれてしまうことはよくあることだが、今までは年上だけに限定されていた。

おかしいな……。なんで、年甲斐もなく年下にときめいているのだろう……と自分の変化を認めないよう必死に表れてきそうな感情に蓋をする。


「あ、そうだ。今週行きませんか?」


「え? どこに行くの?」


「ラーメン屋ですよ。都合が悪い夜はありますか?」


誘われたところは色気のないラーメン屋。

深く考えることはないけど、1週間何も予定のない寂しい女だと思われるのも嫌だと思い、瞳は予定を思い出す振りをする。


「えっと、今夜と木曜日はダメなの。あとは大丈夫だけど」


「俺は水曜日がダメなんで、明日にしますか?」


「うん」


瞳は喉仏より上に視線を向けて、弘人の顔を見る。ラーメンを食べるのが楽しみな弘人は嬉しそうに笑っていた。

カッコいいというよりもかわいいと思える笑顔だが、瞳の心臓は大きく跳ねる。

そして、一瞬にして頬が赤くなった。
< 22 / 107 >

この作品をシェア

pagetop