対象外でも恋咲く
「あれ……なんか顔が赤くないですか? もしかして、具合悪いですか?」


弘人は少し屈んで、瞳の顔色をちゃんと確かめようと覗き込む。


「いや、あの……なんかこの部屋、暑くない?」


「あー、確かに今日天気良いし、暑いですよね」


「ね! あ、私、これを主任に持っていくから行くね」


瞳は慌てて、弘人に背中を向けて資料室を出た。廊下を歩きながら熱くなった顔を手で仰ぐ。たいした風は来ないが……。

その時、前から紗和が歩いてきた。


「あ、高畠さん。小沢さん、見ませんでした?」


「資料室にいるわよ」


「やっぱり! ありがとうございます」


「うん」


瞳は紗和の後ろ姿を見送ってから、営業部へ戻った。

紗和は資料室のドアを開け、見えるところに弘人の姿がなかったので、大きな声で呼びかける。


「小沢さん、いますかー?」


「おー、ここにいるよ。菊池さん、どうした?」


「いえ、すみません。それ、私が頼まれていたやつですよね?」
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