対象外でも恋咲く
紗和は普通ならば、悔しいから売れなければいいとか思うものではないかと思った。だから、逆に考える弘人が理解出来なかった。


「やっぱり自分で作ってみたいんだよ。で、俺の企画で売れたら、小沢さんのおかげですよーと感謝してもらって、作業をさせてもらう! な、一石二鳥だろ?」


それを一石二鳥というのかどうか紗和は考えあぐねたけど、意気揚々とする弘人に苦笑して、ただ頷いた。

おまけに弘人はその勢いで直帰しないで、会社に行くとまで言う。


「小沢さん、帰らないんですか?」


「うん。ちょっと思い付いたから会社に行くよ。あ、菊池さんは気にしないで、帰って。朝も早くに出たんだから、ゆっくり休みなよ。じゃ、気をつけて」


駅に着いて、二人は別々のホームへと向かう。紗和は早足で歩く弘人の後ろ姿を見送りながら、「振り向かないな」と呟く。

紗和は今日1日弘人と過ごしたことで、恋心が芽生えたことを実感した。はっきりと好き!と感じたのではないけど、これは多分恋だと。
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