対象外でも恋咲く
近付き過ぎたかも
弘人はオフィスのあるビルに着いたとき、腕時計で時間を確認した。定時の5時30分を1分過ぎたところで、帰り支度の早い社員なら出てくる時間である。

案の定、エレベーターの前に行くと、数人の社員が降りてきた。「お疲れさまでした」と弘人はすれ違って、誰もいなくなったエレベーターに乗り込む。

営業部のある4階に着いて、営業一課の前を通りすぎて、奥にある自動販売機で缶コーヒーを買う。


「あ、小沢くん。今日は会社に来ないんじゃなかったの?」


「ああ、高畠さん、お疲れさまです。ちょっと確認したいことがあって。高畠さんは残業ですか?」


瞳も同じように自動販売機で飲み物を買おうとやって来た、


「うん。これからデータをまとめてグラフを作らなくちゃならなくて」


「もしかして、また課長に頼まれました?」


弘人は、瞳が残業する原因はいつも課長の急な指示のせいだと思っていた。


「あー、うん、まあ、そうなんだけどね。でも、明日の午前中まででいいと言われたけど、少しでもまとめておきたいと思って勝手に残ったのは私だから」
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