対象外でも恋咲く
弘人は取り分けたサラダを紗和の前に置いてから、ビールで喉を潤した。


「うん、俺も好きになるのに時間は関係ないと思うし、菊池さんの気持ちもちゃんと受け止めるよ。ありがとう、でも、ごめん」


真剣な気持ちにはちゃんと答える。以前よりも近くなった紗和をかわいいと感じてはいたけど、その気持ちは恋ではない。だから、ハッキリと断った。

紗和は視線を落として唇を噛んだが、すぐにまた弘人を真っ直ぐ見た。


「分かりました。理由はやっぱり好きな人がいるからですか? 好きな人、います?」


弘人も恋人と別れたばかりだけど、自分と同じようにもう好きな人が出来たのだろうか…紗和は真意を探るように見つめる。

好きな人…紗和から聞かれた弘人の脳内には瞳の顔が浮かんでいた。顔を赤くするかわいい瞳の顔が……。

だけど、弘人はその気持ちに封印しようとしていた。


「いや、好きな人はいない。ただ、今はまだ誰かと付き合うとか考えられなくて」
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