対象外でも恋咲く
「そういう答えはやめてください。私に興味がないなら、ないとハッキリ言ってくれませんか?」


ありきたりの答えを紗和は求めていなかった。今考えられなくても、いつか考えてくれる? という淡い期待はしたくないからだ。


「興味がないとは言わない。菊池さんはしっかりとした考え方は興味深いと思うし、もっといろいろ話して知りたいとも思う」


「それは、恋愛関係ではないですよね?」


「あー、まあそうだね。うん、申し訳ないけど、恋愛関係での興味はない。仕事上での興味はあるけど」


弘人は、自分が言った答えが間違えていたと思い、首の後ろに手をやって、紗和に謝った。

真剣に聞いてくれているのに、話をはぐらかすように答えたのは間違いだったから。


「分かりました。でも、私は諦めが悪いほうなんです。だから、まだ好きでいるつもりですが、気にしなくてもいいですから。じゃ、ありがとうございました」


諦めが悪くても、振られたのに向き合っているほど神経は図太くない。紗和は一人、居酒屋を出た。
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