対象外でも恋咲く
やっぱり年下に興味をもつものでない、年下に男を感じてはダメなんだ…深入りはしないように……

「あ…」


「えっ? あ、小沢くん…」


居酒屋を出た弘人と、ラーメン屋を出た瞳は駅の改札で行き合った。お互いに芽生え始めた気持ちを封印しようとしていた矢先であったので、この偶然は喜べるものではない。

しかし、無視は出来ない。

弘人は、瞳より30分遅くに退社をしていた。


「今、帰りですか?」


「うん。でも、ご飯食べたりしてたから。小沢くんこそ、早めに帰ったよね?」


「あー、俺も食べていて」


「飲んでもいた?」


瞳は、近付く弘人からアルコールの匂いを感じた。


「もしかして、匂います?」


「少しだけね。今日金曜日だから、飲みたくなるよね。私も帰ったら飲もうかな。じゃ、お疲れさま」


瞳は明るい声を出して、弘人に手を振り、先に改札を通り抜けようとした。


「高畠さん、待ってください」


弘人の呼ぶ声に瞳は立ち止まって振り向く。
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