対象外でも恋咲く
「飲むなら一緒に飲みませんか?」


「えっ? 一緒に?」


「一人で飲むより二人で飲んだほうが楽しいと思うんですけど」


ここで、弘人に誘われると思っていなかった瞳は返事に困った。封印しようとしていた気持ちが滲み出てきそうになる。

誘ってくれるのは嬉しいけど、戸惑う。


「でも」


「俺と飲むのは嫌ですか?」


嫌ではない……一緒にラーメンを食べた時も楽しかった。でも、近付いたら、いろいろと惑わされてしまう。だから、今夜は断りたい。

返事をしない瞳に弘人は距離を縮める。


「今日はやめましょうか」


「えっ? なんで?」


断りたいと思っていたけど、やめると言われると焦るから不思議なものだ。


「だって、困った顔してる。高畠さんを困らせるつもりなんてなかったから…ごめん。帰りましょうか? 疲れているようだし、送りますよ」


避けていても何も解決はしないし、気持ちも定まらないと弘人は一人で飲みながら思っていた。
< 69 / 107 >

この作品をシェア

pagetop