対象外でも恋咲く
だからといって、突然誘うのはいくらなんでも極端過ぎるかと反省をして、今日はやめておこうとする。


瞳は、一人で帰れると送ってもらうことをハッキリと断ったが、方面が同じだからとタクシーに乗せられてしまう。

無言で隣に座る弘人の横顔をチラッと見る。空気が重苦しく感じる。


「ねえ、小沢くん……」


「何ですか?」


瞳は、考え事をしている様子の弘人におそるおそる話し掛ける。

瞳の家まであと5分ほどの距離までタクシーは走っていた。


「もし、良ければ…一緒に飲む? この前、友達の結婚式でもらったワインがあるんだけど」


「いいんですか? 俺を誘って」


「えっ? だって……」


先に誘ってきたのは弘人だ。瞳は、不機嫌そうにしている弘人を気遣って、声を掛けたのだけど、掛ける言葉をミスった?

数分前の自分に静かにじっと座ってろ!と言いたい…。


「まーた、そんな困った顔をしないでくださいよ」
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