対象外でも恋咲く
何かあったと言えばあったし、何もないと言えば何もない。

あった何かとは一緒にラーメンを食べて、具合の悪そうな瞳を送った。でも、送っただけで何もしてないから、何もない。


だから、「何もないよ」と弘人は答えて、メールのチェックを始めた。

何もないことはないと疑うのは女の勘ではあるが、始業のチャイムが鳴ったため、紗和は渋々自分のデスクに戻る。


「13時からミーティングだから、第一会議室に行ってください」


月に一度の部全体のミーティング。誰もが予定表に入れていて、忘れることはないのだが、毎月昼休みになる前に主任が声を掛ける。

今日のミーティングはレポートの発表もあるので、弘人は自分のと紗和のを確認した。二人で発表することになっているが、まだどちらから発表するか決めていなかった。


「菊池さんから発表する?」


「そうですね。私が先で小沢さんがまとめてください」


「うまくまとめられるかは分からないけど、先にお願いするね」


「小沢さんほどの熱意があれば大丈夫ですよ」
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