対象外でも恋咲く
もし、誰かを?

瞳はその誰かを紗和にして、紗和を抱き締める弘人を想像した。

想像だけで胸が痛む。


「嫌かも……うん、嫌だな」


「ほら、嫌でしょ? だから、高畠さんが嫌だと思うことはもう絶対にしない」


「私が嫌だと思うこと?」


「そう。俺は高畠さんが好きだから、高畠さんが嫌がることはしないし、高畠さんに嫌われることもしたくないんです」


話の中で出てきた『好き』というワードを瞳はしっかりと受け止めていた。

まさか弘人が自分のことを本当に好きだとは……。紗和の手を握る弘人を見て、自分にして欲しいと思った。紗和を見ないで自分を見て欲しいと思った。

弘人の心が欲しいと思った。

だけど、欲しいと思っても叶わないものだと思っていた。


「私ね……」


「はい?」


「小沢くんが欲しいの。小沢くんのすべてをもらってもいい?」


「えっ? あ、いいけど、もちろんいいです。でも……もう! あー! マジでなんて殺し文句を言うんですか……」
< 95 / 107 >

この作品をシェア

pagetop