対象外でも恋咲く
弘人は、瞳の言葉に顔を真っ赤にさせた。

そんな弘人の様子に瞳は笑う。


「今夜はビシッと決めようと思ったのに、ずるいですよ。あー、俺のすべてをあげるから、高畠さんのすべてもくださいよ」


完全に惑わされてしまった弘人は、開き直るように瞳にくれと言う。


「えっ……あの、私のすべてなんてもらっても……あ、ううん! 全部あげる!」


またしても出てくる直球な台詞に弘人は頭を抱えた。


「もう勘弁して……とりあえず食べましょう。で、この続きはあとで」


「うん、そ、そうね。あ、美味しそう!」


まだサラダとスープを食べ終わっていないのに、メインのパスタが運ばれてきていた。温かいうちに食べないと美味しさが減ってしまう。

二人はさっきまでのやり取りを心の隅においやって、「美味しい」とデザートまでしっかりと味わって食べた。


「さて、送りますよ」


「うん。ありがとう」


いつもなら断る瞳だったが、今夜は違う。心が通じあったからか弘人の申し出も素直に受け止められた。
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