対象外でも恋咲く
控えめなのに時折降ってくる大胆な言葉と誘うような表情に弘人の心臓はドキドキと激しく動いていた。

いつでも……を今すぐでいいんだと解釈した。つまり、瞳の込めた想いを理解していた。

瞳のマンションまであと5分ほど。今日は一緒に降りて、部屋に入るつもりでいる。


「じゃ、遠慮なくもらってね。俺も遠慮なくいただくから」


弘人は耳元で優しく囁いて、瞳の頬に軽くキスをした。

弘人のキスに瞳は驚いて、顔を弘人のほうに思いっきり向ける。二人の視線はぶつかって、どちらからともなく近付き、今度は口にキスをした。

軽いキスでは物足りない。角度を変えながら深く…口をほぼ同時に開いて舌を絡ませる。

初めてしまうと終わることのないキス。ずっとこのままキスをしていたい。


しかし、数分後……


「お客さーん! どの辺りですかー?」


運転手がいても遠慮なくキスを続けていたが、運転手もまた遠慮なく声を掛けてきた。
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