しましまの恋、甘いジレンマ。

おばさんの家には幼い頃から何度かおじゃましている。
家から歩いてすぐの場所に小学校があって
子供の声は聞こえないがチャイムの音はよく聴こえてきたっけ。

「今開けますね」

車を近くの路肩にとめてもらいそこから少し入り組んだ道を歩く。
お客として来る分には若干不便ではあるけれど、車を持たない
おばさんには特に苦でもなかったらしい。
やっとおばさんの家に到着し玄関の鍵をあける。

「……」
「えっと。私ちょっと用事がありますから。知冬さんはどうぞお好きに」
「…どうも」

連れて来たものの、相手が終始無言だったので気まずい志真。
購入し何十年?も経っているであろう年季の入ったおばさんの家。
いくら2階建てで庭があってもやはり最近の新しい家とは違うし
後で聞いたらお風呂は壊れて使えないというし。

はっきり言ってここにそのまま住むのは幾ら気にしない志真でも

ちょっとばかり難易度が高い。

だから一億のお金を幾らか使ってリフォームしなければ。

「はあ。こりゃお母さんと掃除しにこないとダメだな」

そして冷蔵庫の残念具合とその他生活ゴミの処理が大変そう。
本人もまさか入院することになるなんて思ってないのだから、
ちょっと検査のつもりで入院、そして手術。
家が雑然としているのは当然といえば当然だろう。

「……」

志真がカバンに服などを入れて軽いため息をする後ろで家を見て回る知冬。
やはり値踏みをしているのではないかと思えてならない。
だけどこんな古い家だと分かったら欲しいとは思わないだろう。

「知冬さん?」
「2階へ行っても?」
「どうぞ。私も行きます」

二人で2階へあがり、母に指定されたものを幾つかカバンにつめて。
相手も特に何を触れる訳でもなく眺めて、1階へ。
志真は用事を終えて後は知冬が帰りましょう、というのを待つのみ。
気づいたら彼は庭にいてそこから動こうとしなかった。

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