しましまの恋、甘いジレンマ。
「山田さん、時計持ってる?」
「はい。携帯も持ってますし。それが」
「出てったのが6時39分。今は?」
「7時ちょうどですね」
ちょっと遠いコンビニで買い物をしてお菓子を山盛り買って戻ってきたら
玄関で腕を組んで立っていた長身の外国人、いや、ハーフさん。
理由は不明ではあるが怒っているのかまゆが釣り上がり顔が真剣で、
それもまた俳優さんのようで素敵だと思うがそんな呑気な場合ではない。
「目的地はそんな遠い場所?」
「まあ、15分ほどですね」
「はあ?だったら先に言ってくれませんか?」
「え。あ、あの。なにか…私」
そんな怒らせるような事をした覚えはないですけども。貴方だって行って
らっしゃいって言ったじゃないですか?
まだ玄関。ポカンとした顔で知冬を見つめている志真。
「貴方に何かあったらまっさきに疑われるのは俺になる」
「……、…はあ。それはどうも、すみませんでした」
なんだよ。
あれ、何期待してるんだ私。
「そんなに何を買ってきたんですか」
「お菓子とかお茶とかお弁当とかラーメンとか」
「……」
「も、もちろん自分で料理もしますよ。でもほら今はお腹が空いてるから」
「何も言ってません」
「知冬さんは顔に出やすすぎるんです」
明らかに「コイツ自分じゃ何もしねーんだな」という呆れた顔をしてた。
志真は不服そうな顔をしながらも台所へ向かい食料を袋からだして
お湯を沸かし、レトルトの味噌汁と温めてもらったお弁当を食べ始める。
「……なに」
「おにぎりだけじゃ足りないだろうと思って」
最初はふてくされた顔で食べていた志真だがそっと小さい袋を出し
それを知冬に渡した。
「……」
袋の中を見るとそこには温かい肉まんが2個。
「電子レンジ欲しいですね」
「…そうですね」
「1個はピザまんにしましたよ」
「カレーまんのが好きなんですけどね」
「すいません」
知冬はそれを袋から出して食べ始めた。
それ以降はお互いに無言。
実家を出ることはちょっと憧れはあった
けど、そんな憧れの最初の夜がこんなわびしいなんて思わなかった。
「炊飯器壊れてません?」
「わ。ほんとだ。買ってこなきゃ…」
「……。明日にも買い物をしにいかないと」
「私買ってきますね」
「二人で行きましょう、折半にしたほうがいい。お互いに使うものだから」
「……はい」