しましまの恋、甘いジレンマ。
沙苗おばさんは志真から見ると既に故人であるお婆ちゃんの妹。
ということで何時何があってもおかしくはない年齢ではあるが、
結婚という道を選ばず独身を貫いたためにひとり。
戦時中は幼くして軍需工場で働き終戦後は定年まで教師として
働き続け立派な庭つきの家を所有する女傑。
「そうね。貴方も世話になったからね。私は入院の手続きとか
おばさんの世話をするつもりだから。貴方も協力してね」
「うん」
定年後は共働きで鍵っ子である志真のために家に来てくれていた。
元先生とあって礼儀には厳しい人だったけれど、根は優しい。
それが病気で入院で手術なんて。
今日はもう遅いから明日、仕事終わりに母と一緒に病院へ行く。
働き出してからは会うことがめっきり無くなったけれど、
自分にできることはなんでもしようと思う。
大人になった私ができる唯一の恩返しだ。
「志真、悪いけど売店で何か飲み物買ってきてくれる?」
「うん。わかった。おばさんの分は?」
「おばさんは今は良いわ、お願いね」
翌日、仕事終わりに母と合流。病院へ向かいおばさんのいる病室へ。
見た目は変わらずにみえたしハキハキと話していたけれど。
お使いを頼まれて母とおばさんを残し、志真はいったん病室を出て売店へ。
「元気そう…だけど、やっぱり辛いよね…」
ちょっと迷って時間がかかったけれど、飲み物を買って戻ったら笑い声が聞こえた。
何だか私の話をしているようなきもする。
志真にはまだ良い相手はいないのかと母に聞いてたりして、何時になるか分からない
結婚の話とかたまにしていたから。
本人も自分の病を自覚しているし、その説明も母と一緒に受けている。
私だったらあんな元気に喋ったりは出来ないかもしれない。
その芯の強さが羨ましいと思った。