しましまの恋、甘いジレンマ。
気づいたら7日目
昔から目覚ましをセットしてもベルがなる前に目が覚めてしまう。
たとえしていなくても結局は同じくらいの時間帯には目が覚める。
志真は時計を確認し、やっぱりなぁとぼやきながら体を起こした。
買ってきたばかりの真新しい布団をたたんで押し入れに仕舞おうとして
今日が土曜日だと気づいてしばし考え。
「おはようございます」
最初は気を使って着替えてから1階へ降りていた志真だが
7日目にもなるとパジャマでもいいかとそのまま1階へ降りた。
お化粧なんてものは1日目の銭湯から既に放棄してます。
もしかして貞操の危機!?とか勝手に心配していたけれど
私は元気です。
手には布団を抱えて。安っぽいペラッペラの布団セットは
志真でも簡単に持ち運べるから便利。真冬は地獄だろうけど。
「庭に干すつもりですか?」
「はい。せっかくのいい天気だし、土曜日だし」
志真よりも何時も早く起きて着替えて自分だけのコーヒーを飲んでいる知冬。
もちろん、志真が起きてきた所で彼が
貴方もどうぞ、なんて出してくれるはずもない。
リビングから庭へ出られる窓や他小窓を全て開け放して心地よい空気と陽の光。
この数日で知冬が壁や隙間をこまめに直してくれて壁紙も貼り直してくれた。
そんな大工さんのような大掛かりな作業をした訳ではないのだがすっかりおしゃれ。
おそらく直す場所に無駄がなく、処置も的確なのだろう。
「……」
志真の返事に少し不服そうな顔をする。
「…だめ、でした?」
「絵を描こうと思っていたので…」
さほど広いスペースでもないお庭。
布団を干したら狭いし、なにより雰囲気が悪くなる。とかかな?
志真は布団を抱えたまま。
「あ。じゃあ、二階で干しておきます」
「いえ。お気遣いなく」
「ううん。ここは知冬さんのアトリエでもありますしね」
「二階に干す場所はあるんですか?」
「ええ」
そう言って今降りてきた階段を戻り二階へ。
「Oh!Lala!」
そのまま窓を開けて屋根に登って布団を干したら庭から聞き慣れない叫び声。
「どうかしました?」
さすがに立ったままは怖いので四つん這いで屋根から覗き込む志真。
「O…Oh, mon Dieu ! …あ、あなたは何をしてるんですか」
声の主は冗談とかでなく本気で真っ青な顔をしてこちらを見つめている。
「何って。干してますけど。日がよく当たるんですよね、ここ。だから布団」
「ば、馬鹿なんじゃないか?危ないだろ!」
「馬鹿ってそんな」
「いいから!今すぐに!部屋に戻って!Pressons! Pressons! 」
何か知らないがまくし立てられたので渋々部屋に戻る。