しましまの恋、甘いジレンマ。
着替えを済ませ化粧もそれなりにして母親に電話。
知冬は庭でキャンバスに向かったまま。
声をかけるのも悪いだろうとそっと出てきた。
「どう?1人は満喫できてる?」
「うん」
「お父さんがね、志真のことだから3日もしたら帰ってくるだろうって」
「私だって出来るよひとり暮らしくらい」
待ち合わせた場所で母親と合流し車に乗って病院へ向かう。
甘いモノが好きだからと食べやすいお菓子をお見舞いに買って。
話題はやはり志真のひとり暮らし。
母は笑いながらも心配はしてくれていたようで、最初の夜は電話もしてくれた。
元気そうにしている志真の様子を見て安心した様子だった。
「あとは旦那か。でもそんな急いで見つけられるものでもないしね。
私が言うのもなんだけど、学校って特殊な所だし。発展しづらいかもしれないけど、
人の出入りが激しい所でもあるから、案外いい出会いが舞い込むかもしれない」
「そうだね。でも、私だって実は言ってないだけでアテはある…んだ」
とてもイケメンでハーフな婚約者さんが出来ました、と言うのが怖い。
母親になら「そういう建前でお願いした人なんだ」とバラしても良い気がするけれど。
おばさんには悪いけど、お母さんにも協力してもらって話を進めようかな。
チラっと様子をうかがう志真。
「あらそうなの?良かったじゃない。昔は墓場とか言ってたけどね、
あくまでそれは私の若いころの話であって。志真にとっては違うから」
「お母さん」
「あと勘違いしないでね、貴方を生んだことは全然悔いてないから」
「……」
すいません、こんな娘で。嘘つきでごめんなさい。
「さあ、そろそろつくから荷物もって」
「はい」
結局言い出せなくて、駐車場に車をとめておばさんの居る部屋へ。
今度は母がゴミを捨ててくると一旦部屋を出て行く。
「そうだ。志真ちゃん。どう?いい人はいるの?」
「……、うん」
残ったのはおばさんと志真。ストレートに聞いてくるから迷ったけれど、
結局濁した返事をする。はっきり言ってもよかったのに、
その為に知冬と契約したのに。
「そう。よかった。最近…いい出会いがあったのね?」
「そ、そう。かな。うん。出会いがあったの」
それが良いか悪いかは、正直まだ分からないけど。
「そう、志真ちゃんは大事な人を見つけられたのね。よかった」
おばさんがそんなことを知るよしもないから純粋に喜んだ顔をしている。
「うん…」
「それで?志真ちゃんのいい人はどんな人?」
「かっこよくて紳士で、……優しい、かなあ」