しましまの恋、甘いジレンマ。


「……」
「何ですかその不服そうなお顔」

昼食後、休憩を挟んで志真は親を迎えられるように掃除を始める。
知冬は庭へ戻り作業を続け、そこからはとても静かで穏やかな時間。
ゴミをまとめて、雑巾がけして、掃除機をかけて。

あっという間に3時近く、
お茶でも飲もうと台所でゴソゴソ。ついでに知冬も呼んだ。

「……これ、紅茶?」

カップに注いだのはアールグレイ。相手にはストレート。
志真はミルクと砂糖をいれた。

「そんな高くないやつですけど。ティーバッグだし」
「……」
「紅茶は嫌いとか?」
「……嫌いじゃないですけど、コーヒーのが好きですね」

それってやっぱり嫌いってことじゃないですか?

「……」
「……」

何か言いたそうな顔でじーっとこちらを見つめる知冬。

「淹れなおしませんよ?あとはセルフです」

せっかく紅茶いれたのに。
自分だってコーヒーを淹れてくれないのだから、これは当然。
志真はそれだけ言うと無視して甘いミルクティを飲みクッキーを食べる。

「……せめてフレーバーティ」
「贅沢」
「……、Merci」

不満な顔をするが自分でいれなおすのは面倒と思ったのか
知冬はカップを手にして飲み始める。
なんでも押しが強いように見えて、実際はそうでもないのかも。
だったらちょっと可愛いかもしれない。

「私飲むのは緑茶か紅茶の方が多いんですよね。コーヒーって少し苦手。
おもいっきり甘くしてミルクたっぷりならなんとかいけますけど」
「美味しいコーヒーを飲んだことがないんじゃないですか」
「確かに。スタバとか高いしお洒落すぎて行かない」
「そうではなくて。熟練したバリスタの居るようなカフェですよ」

紅茶がまったく飲めないほど嫌いというわけではなく、
最初はちょっと微妙な顔をした知冬だが今は普通に飲んでいる。
クッキーには手を出していないけれど。志真は構わずボリボリ。

「そんなお店あるんですね。あ、ここ来る途中の喫茶店とかにも」
「居ないでしょう。あんな小汚い店」
「そ、それは言いすぎですよ。あそこのサンドイッチ美味しいです」
「話がそれてませんか」
「…ですね。そんな美味しいなら……コーヒー飲んでみようかなあ」

大昔に飲んで微妙だと思ってから自発的にはあまり飲まないコーヒー。
知冬の紅茶のように、全く飲めないわけではないけれど微妙な顔になる。
ただ美味しい味を知らないだけなら、専門の人が居るのなら飲んでみたいような。

「興味があるのなら俺の行きつけの店に行ってみますか?」
「是非教えて下さい。今度友達誘って」
「俺が教えてるのに他人と行くんですか?薄情な人だな」
「……つ、連れて行って貰える感じですか?」
「そのつもりで言いました」
「あ。ど、どうも。すいません…」
「どうなんですか。俺と行くんですか、行かないんですか」
「い、行きます。連れて行ってください」

真顔で迫ってこないでください、やっぱり怖いです。

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