しましまの恋、甘いジレンマ。
お昼を手抜きにしたので夕飯はきちんとお料理。
志真が台所に立って、テーブルに料理を運び。
知冬を呼んで二人で食べ始める。
この一連の流れにもう不満も違和感もなくなっている志真。
「絵画に興味があるんですか」
「たまに美術館とか行きますよ。この前はファラオの神秘展に行きました」
「だったら明日出かけるついでに画廊へ行ってみませんか。美術館ほどの規模は
ありませんが、展示されているものは中々興味深いものが多いです。無料ですしね」
「へえ。で、でも。そんな知識とかないですけど…」
ファラオの像とか調子に乗って買ったもののホコリをかぶって放置だし。
画家の知冬なら知識はあるから楽しいだろうけど。
私が行くと恥をかくきがする。志真の美術の成績は驚きの2。
「芸術は皆の為にあるものです、一部の知識がある人間だけのものじゃないでしょう。
それに、堅苦しいものではなくて現代アート作品も多いので楽しめるのではと思ったのですが」
「それは楽しそうですね!じゃあ、是非教えて下さい」
「……」
「あ。あの。友達と行くんじゃなくて、知冬さんに案内して頂くという意味です」
「ええ。もちろん」
危ない。また薄情者めと怒られるところだった。
でもこれで明日は美味しいコーヒーのお店に連れて行ってもらってアートも見る。
何時もなら母親に強請って車で買い物に連れて行ってもらうばかりだった。
友達は休みが不規則なのでタイミングが合いづらくて。
これは久しぶりに楽しい日曜日になりそうだ。
というか、これってもしやデートっぽいもの?
「……」
「どうかしましたか」
「いえ。…あの、和食ばっかり作っちゃってますけど良かったですか」
「ええ。和食は好きです」
「そっか。よかった」
日本で暮らした事もあるハーフでもフランス暮らしのほうが長い知冬。
志真の勝手なイメージとしてパスタとかピザとかクロワッサン?
など用意するべきかと思ったけれど
彼から何が食べたいとかのリクエストは貰ったことはない。
自分はしないで志真が作っているから気を使っているのだろうか?
「山田さんは味付けを甘くしがちですよね」
「う。…美味しくないですか」
「母親とは違うと思っただけですよ。あの人は何でも塩を入れるから」
「じゃあ知冬さんのは塩で味付けを」
「手間でしょう。今のままでけっこうです。甘いほうが美味しいと思います」
「そうですか。よかった」
忙しい母親の手伝いで料理はたまにしていたけれど、
煮物も焼き物も甘めになる志真。家族も甘めが好きなようで、
今まで何も言われたことはなかったから焦る。
「……」
「でもコーヒーはブラックのみですよね」
「ええ、甘いコーヒーというのはどうも」
「紅茶もですよね」
「そもそも紅茶自体飲みませんから」
食べ物と飲み物じゃ違うとは思うけれど。
相手の味の好みはなんとなく知っておきたくて。
「じゃあ、私は紅茶が美味しいってお店を紹介します」
「結構です」
「そ、そんな即答しないでください。……分かりました」
「そうですね。貴方のそのしおれた顔が面白いので行きましょう」
「……ひどい」
どうせ貴方からしたらペラッペラな不細工ですよ。