しましまの恋、甘いジレンマ。
おしゃべりが大好きなおばさんとは話が尽きず。
でも時計を見て、話を切りあげまた来るからと笑顔で病室を出た。
来週頭にある手術の日も一緒に来て見守る事になっている。
「…ねえ、志真。今付き合ってる人って居る?」
「え?な、なに急に」
不安な気持ちを抱えながらも病院の駐車場に入り車に乗り込んだら
突然母が切り出した。
さっき志真が居ない時におばさんと話していた続き?
でも、母はそこまで異性との話に興味がなくて、
そんな彼氏の話なんてふってきたことはなかったのに。
「おばさんがね、まあ、あれでもやっぱり心が弱ってるんだと思うんだけど」
「え?」
「貴方に自分の財産を引き受けて欲しいって言ってるの」
「なに?え?財産…?」
なにそれなんでいきなりそんな話に?
「うん。実はお母さん、おばさんに金銭面の管理を任されててね。
自分はもう歳だからそういう細かいことが分からないからって。
それでざっくりとなんだけどまあ、軽く見積もって…1億」
「いっ」
いちおく!?
え。
先生すごい!?
「あとあの家。あまり綺麗とは言えないけど、おばさんにとっては宝だから」
「家も!?ええ?なにそれ。どうして?私何もしてないし」
独り身でもおばさんはそこまで孤立している訳ではない。
兄弟もたくさんいる。いや、居た。
皆様歳も歳なので今現在元気で残っているのはおばさんだけ。
それでもその息子やら娘などがいる訳だが。
姪なのも母で、志真はその子ども。
身内には違いないが直接的な繋がりはない。
ただおばさんが他の親類とあまり縁が無いらしいのと
幼い頃から面倒を見てもらってよく知っている間ではあるけれど。
「志真には幸せになってほしいって」
「そ、それは。1億あれば…いや、そうじゃない。お金じゃない。おばさんの健康が」
「ぜひ旦那さんと家を相続して住んで欲しいって」
「それは旦那さんと相談して……え?だんな?」
「やっぱりおばさんも結婚は大事だと思っているみたいで、志真がお付き合いしている
男性を紹介して安心させてあげたら1億と家はすっぽり貴方のものって訳」
「な。な。に?!」
「一番理想的なのは旦那かそれに近い人を紹介することだろうけど…ねえ?」
これって冗談、とか夢、じゃないよね。