しましまの恋、甘いジレンマ。
デート、というのは外国の人からすると普通のコトなのだろうか。
男女で単純に遊びに行くのもデートというのだろうか?
勘違いしそうになるのでその辺をはっきりと言って欲しいのだが。
あと
なにげに普段着をやる気ないとか馬鹿にされた気がする。
「画廊って沢山あるんですか?」
「ええ、ただ最近は数が減ってきていますね。後継者が居なかったり吸収されたり」
今回連れて行ってもらうのはその中でも特におすすめできる画廊らしい。
絵画の難しい話は分からないけれど、アート自体は志真も嫌いではないから。
馬鹿をさらけ出さないようにしたいけれどもう既にどうでも良くなってきた。
「知冬さんの作品があったりして」
「あったら、嫌ですか?」
「え。あるんですか?」
「……」
「す、すいません。ありますよね!画家さんですもんね!」
今更だけどどうしよう、この人すごい気難しい。
芸術家ってみんなこんな感じなのかな?
今までの美術の先生は確かにちょっと変わってる人が多かった気がする。
あ、そうだ、この人うちの学校の美術講師だった。納得。
すっかりご機嫌斜めになった知冬をフォローしている間に車がとまる。
「あら、テオ先生。いらっしゃい」
「Bonjour! Vous allez bien? トモエさん」
志真はもっと巨大な建物を想像していたが案内されたのは
ビルとビルの間にこじんまりと佇む画廊。
中に入ると受付の人かと思ったら雰囲気的に経営者らしきマダムが登場する。
さっきまでのふくれっ面がウソのように愛想のいいテオ先生に大変身。
大げさに何か挨拶をしたら抱き合って頬にキスをして、二人で喋り始めた。
「ふふ、ええ。元気にしてるわ。で、こっちの女性は?」
「俺の婚約者ですよ、山田さんです」
「え!?…え。あ。はい、どうも。山田です」
「あら。そう、ふふ。ゆっくり見ていってくださいね」
「…はい」
邪魔しちゃ悪いかと適当にその辺を見ていたらいきなり話が志真に向いて、
それも婚約者とか言われて。ドキドキ緊張しすぎて死ぬかと思った。
笑顔ながらマダムが値踏みするような目で志真を見つめているし。
これは確かに着替えてきて正解だった。
「どうかしましたか。青い顔をして」
「い、いえ。ちょっと、びっくりしちゃって……」
「これから親や身内を騙そうというのにあれくらいで驚かないでください」
「そ、そうですよね」
「もっと堂々としてください、貴方は俺の奥さんになるんですから」
「そうですよね。そうです。はい」
そうだ、私はこの人の奥さんになるんだ。
驚いてどうする。もっと堂々としなきゃ!
……あれ、なんか意味が違うような。気のせい?
「気になるものがあるならここでは買うことも出来ますよ」
「へえ。この置物とか小さくて可愛い……い、…え、…10万…これで?」
「買います?トモエさんを呼んできましょうか?」
「買いません」
見学は無料だけど、お土産に買っていけるようなものはなさそうだ。
「俺の作品ですね」
「わあ。……たかぁい…」