しましまの恋、甘いジレンマ。
不安と心配、そして希望が入り交じる志真の頭のなか。
チラチラと厭らしく1億と家がちらつく。
ああ、最低だ。大事なときにこんなこと考えている自分が最低だ。
「おばさん独身だったし全然自分にお金かけない人だったから。
年金もほとんど手付かずで、凄いわよね?」
「……」
「まだ死んでないのに不謹慎かもしれないけど。当の本人が望んでいることだから。
この際、誰かいい人見繕って結婚しちゃえば?」
「そんないきなり」
心が揺れないと言ったら嘘になる。だけど今のところ恋愛感情を持てそうな
そんな素敵な相手は居ない。そもそも結婚に理想はあまり持ってない。
身近な現実である父と母はお見合い結婚。それを仕組んだのはあのおばさん。
だから目をかけている志真にも結婚をして欲しいのだろうけど。
結婚なんてね…墓場みたいなものよ
仕事に生きがいを感じバリキャリ願望の高かった母からすると結婚も子育ても
そこまで望むものではなく時代がそういう風潮だったから、おばさんに言われた
お見合いで断りきれなかったから。それくらいの意識しかなったようで。
それでも子どもに対してはそれなりの愛情を注いではくれたけれど。
恋愛結婚ではない夫婦間の微妙な空気を昔からビシバシ感じてきた。
志真も仕事一筋でバリバリしたい訳ではないけれど、恋もよくわからない。
ただ知らないだけかもしれないけれど。
「……誰か適当に見繕って、お礼を払って。それで家とお金…あああ」
仕事場でもついチラついて頭を悩ませる。
実家住まいで働いているから金には困ってはない。
けど、庭付きの家とそれをリフォームするお金があるとしたら?
誰の干渉も受けない自由な暮らし。
この変化のない窮屈な日々をかえられるかもしれないなら、
挑む価値はあるかもしれない。
ただ大きな問題が出てくる。