しましまの恋、甘いジレンマ。
いきなり怒っていたから驚いたけれど、今はもう落ち着いた様子。
その話をしようとすると黙ってしまって無視をするので何も言わない。
おそらく何かしらのカルチャーショックがあったのだろう。
志真は二階へあがり布団を敷いてその中でぼんやり考える。
明日、全ては明日。
「うまくいくといいな。……そしたら、全部終わりかな」
おばさんを上手に騙せたら後ですぐに両親には話をするつもり。
母親なんて「やっぱりね!」と大笑いするだろうけど。構わない。
頭のなかでああしようこうしようと組み立てているといつの間にか就寝。
「騙されちゃ駄目ですよ山田さん」
「え」
「外国人のウインクは挨拶みたいなもんなんです。ボディタッチもそう。
キスだって恋人用とそれ以外用のもちゃんとあるんです。それが分かってなくて
もしかして彼は私に気があるの!?とか勘違いしちゃう日本人女子は多いんだから」
「……はあ」
翌日。時間が迫るにつれ一人で悶々と抱えているのが辛くなってきて
経験豊富そうな新野先生に会いにお昼休みを利用して保健室へやってきた。
そんなはっきりと知冬の話しをした訳ではないけれど、やはり何かしら
分かるのか突然こちらを見つめて力説しだした。
「中にはそういう気持ちを利用してヤルだけヤってさよならする奴もいるんです。
相手はいいですよね、旅行先で遊んで家に帰っちゃえば何も無かったことになる」
「な、なるほど。危ない人も居るんですね」
「山田さんはそういう経験が無いから特に引っかかりやすいの」
「……断定された」
そりゃ豊富ではないけど。そんな真面目な顔で言われるとまた傷つくような。
「騙される方も馬鹿だっていうのもありますけどね。相手は明確な言葉を使わないけど
そういう思わせぶりに見える行動はするから、勘違いしてすぐのぼせ上がって」
「なんだか経験者のような語りっぷりですね…?」
「は?!」
「い、いえ。なんでもないです。気をつけます」
思わせぶりな態度、か。志真はこれまでを思い返してみる。
まず彼にウインクなんかされたことない。笑顔を見る事も少ないかもしれない。
目があってもすぐそらされるし自分もそうするし、明らかなボディタッチもない。
一緒に歩くときはぶつからないようにかお互いにちょっと距離を開けて歩くほどだ。
挨拶のキスなんてものもない、あの画廊のマダムにはしていたのに。
そして、日本語はとても流暢なのに必要以上の言葉はかけられない。
あるとしても、怒涛の駄目だし。
あれ?私何でこんな人が気になってるんだ?
「テオ先生は明るいし人気がありますしね、山田さんの気持ちも分からなくはない。
でも貴方にはどっちかっていうと西田先生のほうが似合っていると思う」
「体育会系はちょっと…」