しましまの恋、甘いジレンマ。


両親の陰謀かとおもいきや、おばさんの温かいおせっかいだった。

知冬の父親がおばさんの元生徒。昔の先生のためにフランスに居る
息子と引き合わせようとしてくれるなんて、どんな人なんだろう?
離婚して微妙な関係なのだと思っていたのに。

謎がけっこう残ってしまったけれど、もうどうだっていい。

「……じゃあ、これで」

今は何もしたくない。いいたくない。ききたくない。

何時フランスへ帰るか知らないがおばさんの家に住みたいだけ住めばいい、
志真は実家に帰りたくないから友達の家かビジネスホテルにでも泊まる予定。

看護師さんに注意されながら病院の裏口から外へ出る。
知冬とはずっと会話もなく、病院を出ても暫くは距離を保って歩いていたけれど。

交差点にいきついて、もうここでお別れ。

「話をするはずでは?」
「…したくないです」

足早に過ぎ去ろうとしたのに、あっという間に追いつかれて。

手を掴まれた。
「話がしたい」
「したくない」
「何故ですか?おばさんとは話せても俺は駄目?」
「何故?よくそんなことが。……いえ、貴方は悪くないんですよね。
勝手に騙された私が悪かっただけなんですから」

そう、貴方は何も悪く無い。

甘い誘惑はしてこなかった、ただ親に頼まれただけだから。

「それは、きちんと話が出来なかったのは謝ります」
「そういうの要らないです。もうほっといてください」

これ以上は泣きたくない。声も枯れるし、頭も痛い。

どうせ寝たって顔はパンパンになるだろうから明日は学校を休むつもり。

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