しましまの恋、甘いジレンマ。
知冬を見送り、親にも連絡を済ませ後は自由。
まずは洗濯物を干し窓を開けて空気を入れ替えて、天気もいいし
布団を干そうと二階へ上がっていって、屋根には行かず庭に干した。
本人が居なくてもやはり怒られることはしないほうがいいから。
「よし!今日は時間もあるし徹底的に綺麗にするぞ!」
病気でもないのに仕事を休んでしまったのが今更ながら辛くなってきて
何かしてないとそわそわする。顔はまだ少し腫れているし瞼もだけど。
気持ちが明るいだけに罪悪感というものが押し寄せる。
とにかく何かしてないと駄目だ。
志真は掃除機やら雑巾、ハタキなど取り出しあちこち掃除をする。
「夕飯は何作ってもらおうかなぁ。焼き肉…中華もいいなぁ」
鼻歌交じりに廊下を雑巾がけしながらもう夕飯のメニューを妄想する。
おもいっきり食べたいのでお昼はセーブして冷蔵庫のものを適当に食べよう。
母親が一緒なら普段なら手がとどかない高級食材も買ってもらえるからいい。
『志真。大丈夫か?元気でやってるか』
昨日の夜をすっかり忘れていたけれど、珍しい父からの電話で思いだす。
「うん。大丈夫、あ。お母さんから聞いた?」
『お母さんな、お前が心配で朝から探しに行くって仕事を休んでたんだ』
「え」
朝かけたときはそんな話ししてなかったのに。
『騙すやり方は良くなかった。でも、皆志真を心配してる事はわかってくれ』
「……、…わかってる。ごめんなさい、心配かけて」
『父さんは別にお前がそんなすぐに結婚しなくたって良いと思ってるんだ。
焦ることはない、お前の良さを分かってくれる男はこの世に山程いる…』
「え。あ。う、うん。…ありがとう」
『その中の誰が来ようとも父さんが返り討ちにしてくれるわ』
「待ってそれじゃ私結婚出来ない」
『はっはっはっは。面白かったか?』
「う、うん…お、おもしろい」
まずい。この空気で知冬とのことを話したら怒られそう。
お母さんは話してくれなかったのだろうか?
『じゃあ、今日は帰ってくるんだろ。母さんに沢山買ってもらえ。酒を一緒に飲もう』
「うん。あの。でも、その」
私一人じゃないんです、けど。
『元気そうでよかったよ、それじゃまた夕方な』
「はい」
言えないまま電話を切ってしまう私のいくじなし。
でも下手にここで話すよりも実際に家で彼と一緒に話をしたほうがいいか。
もし何かあっても母に協力してもらえば心強いし。
「あ。懐かしいクレパスだ」
気を取り直し倉庫をあけてゴソゴソと中の物を外へ出していたら
昔なつかしい学校で使う道具が出てきた。