しましまの恋、甘いジレンマ。
共働きで夕方まで誰もいない志真の家に来てくれたおばさん。
基本「子どもは外で遊ぶべし!」と追い出されていたのだが、
雨の日はお絵かきをしましょうとよく紙とクレパスを出してくれた。
「懐かしい」
大掛かりな掃除中にしてはいけないこと、それは昔を思いだすこと。
でももう遅い。
志真の手にはクレパスと新聞広告の真っ白な裏面。
ワクワクしながらそれを机に置いてすっかりお絵かきに夢中。
あの頃はこうだったとかああだったとか思い出に耽り。
「……ん…ぁ」
ぼんやりと意識が戻ってきて、でも暫くは目が開けられずまどろんで。
ようやく自分がお絵かきの途中で寝てしまったのだと認識する。
お腹がすいてちょっと早めの昼食にカップラーメンを食べてしまったのが
いけなかっただろうか。
私何処で寝ちゃったんだろう。リビング?居間?
だめだ思い出せない。けど温かいな。布団敷いたっけ?
まあいいか。
ゴソゴソと寝返りを打っていたら暖かく硬いのに手が当たる。
「…起きた?」
そして耳元でナンカきこえる。怖いこと聞こえる。
「…ど…どっ…?」
駄目だ寝起きの頭じゃ上手く喋ることも出来ない。
「今日の授業はもう終わったので帰ってきましたよ」
「……っ」
いつの間に知冬さん来てますか?え、もう帰ってきたの?
まだ日は明るいからお昼すぎくらい?
まずい、隙をつかれた!油断した!
すっかり体が固まっている志真をころんと転がし仰向けに寝かせ
その上に優しく乗りかかる。でも体は触れるか触れないかの距離で。
志真の顔の左右には知冬の手があり正面には彼の顔がある。
寝ていたのだからもちろん背中は床。
つまりは逃げられない。
蛇に睨まれたカエルとはこのことか。