しましまの恋、甘いジレンマ。
彼は婚約って言ったよね。こんにゃくじゃなくて。
結婚の約束というかほぼそれって決まりだよね?
それとも外国では普通のやりとり?
頭のなかがまたしてもパニックになっている志真をよそに、
車はあっという間に駐車場に到着し知冬に何も言えないまま
カバンを抱えて家に戻ってくる。
「私最近え?とかは?とかしか言ってない気がする」
いろんなことがありすぎて頭のなかの情報処理が追いつかない。
二階にあがりカバンを押入れの奥底に隠して座り込む。
こんなことなら家でお風呂はいって来たら良かった。
「志真?」
「知冬さんお風呂行きましょ。流石に2日連続は不味い」
「……あの銭湯ですか」
両親と連絡をとっているのかまたパソコンで作業中だった知冬。
風呂へ行こうというとちょっと嫌そうな顔をした。
「大丈夫ですよ。ささーって脱いでささーって戻るから」
「仕方ない、あの風呂は他の店に比べて破格に安いですしね」
「そうですよ。節約節約」
説得に成功し何時ものお風呂セットと着替えを持って家を出る。
何時も以上にきちんと鍵を確認してから。
「…婚約は無理そう?」
夜道を歩いていると唐突に知冬が問いかける。
「ひとつ答えて」
「何ですか」
「…私とえっちがしたいからそういうこと言ってる?」
結婚の約束をしたらもう結婚したようなもんですよね、とか言わない?
「ああ、なるほど」
「違った?」
「今気づいた。…たしかに、そういう考えも出来ますね」
「…藪蛇かなこれ」