しましまの恋、甘いジレンマ。
良いことを聞いたと言わんばかりに嬉しそうにニコニコしている知冬。
「俺はただ君と公式の契約をして独占したかっただけ。そんな風に考えてるなんて、
志真もちゃんと俺とのセックスに関心があるんだ、それは良かった」
「な、…な、ない、わけないでしょっ。だ、って、だってっ私達っ付き合ってっ」
あれ私何言ってますかー!?違うでしょー!?
「落ち着いて。大丈夫、君の意思なしに無理強いはしない」
「……」
「ただ志真から誘われたら断る理由はない、けどね?」
「わ、分かってます。大丈夫です」
「これが俺の答え。それで、志真の返事は?」
さっきまで笑っていた知冬だが、突然真剣な表情。
志真も真面目に返事をしなければならないと察して入る。
だけど正直、笑顔で即答は出来そうにない。
交際を正式に始めてすぐの婚約。その気持は嬉しいけれど。
住む世界も違うし、国もちがうし、当然のことながら文化も違うわけで。
芸術家の妻が自分に務まるだろうか。
今はただ浮かれているだけかもしれない、この初めての熱い感情に。
恋愛初心者の志真にこのハードルは中々高い気がして。
「……」
「志真」
黙ってしまった志真の頭を撫でてそっと頬をなぞる知冬の指。
それだけでうっとりして嬉しくなってしまう私はどうかしてる?
だけど嬉しいの。心地いいの。愛しいの。
「知冬さんとせっかく出会えたんだからこの気持ちを大事にしていきたい。
けど、婚約って…そういうコトですよね。まだ、その気持ちにこたえられる自信がない」
「無理ですか」
「無理じゃない。けど。ただ整理がつかないだけ。貴方の、その、…奥さんになるって。
自分に自信がもてるまで…口説いてくれる?」
周囲の期待も心配も、言われないと気づけない鈍感な女だから。
今やっと知冬への気持ちをはっきりさせた所。気持ちに整理がつくまで、
婚約は出来てもその先にある最後の言葉はもう少しだけ待って欲しい。
なんて、こんなワガママを言ったら嫌われるかもしれない。
志真は不安げにじっと知冬を見つめる。
「情熱的には出来ないかもしれないけど。それで志真が俺だけを見てくれるなら」
「婚約してもたぶん、キスまでですけど、その辺も…いい?」
「いいですよ」
「あ、あの。怒ってもげんこつとか無しで」
「俺の手はそんな野蛮なことには使いません」
知冬は笑顔で答える。志真は暫し間をとって。
「で、ではっ。ふつつかものでございますが、正式な婚約者として
今後も宜しくお願いします」
と言って深く一礼した。
「Oui。Merci de mavoir choisi.」
「……なんて言ったの?」
「ありがとう」
「……こちらこそ。…知冬さん、…だいすき」