しましまの恋、甘いジレンマ。
しましまの恋
時間はかなり押したけれど、無事手術は成功。
おばさんは違う部屋で暫くは面会謝絶。経過を見ることになった。
先生からお話がありますと看護師さんに呼ばれ、母と二人で行ったら
小難しい話をしながら執刀医に切除した肉片のようなものを見せられて
母が卒倒した。
「……じゃあ、志真。今日はありがとうね」
「お母さんこそ大丈夫?」
「大丈夫。ちょっとびっくりしただけ」
「成功してよかったね」
「でもこれからも経過を見ないといけないから。大変なのはこれから」
「うん」
「でも、志真は自分の人生を大事にしなさい」
「……はい」
顔色が悪くなっている母を知冬の運転で家まで送り届けそこで別れる。
言葉には出さなくても仕事をしながらおばさんの世話や手続きをするのは
若くもない、今年定年を迎える母には負担だったかもしれない。
「…志真、こんな時ですけど。いいですか」
「何です?」
知冬も病院まではタクシーで来ていたそうなので呼べそうな大きな道まで歩く。
彼はずっと携帯を見ていた。
「今母が父と合流したそうなので。志真と一緒に食事をしたいそうです。
それで、何時なら大丈夫かと」
「土曜日でもいいですか。どうせなら父と母とも一緒にしたいです」
「わかりました。そう伝えます。…あまり良いタイミングではないですね」
「知冬さんのお母さんか」
あのお父さんの隣にくる女性。フランス美人を最初は想像していたけれど
ヒョウ柄の強烈な服とか着てたりして。どうしよう、両親に反対されるかな。
「それでいいそうです。店はこちらで手配すると返ってきました」
「はい」
「ではこの話は土曜日まで置いておくとして、本題に入りましょうか」
「本題?あ。タクシーですね?大丈夫ですよここでこう手を上げると」
「まだ呼ばないでください」
志真が道端であげた手を速攻で握られて下ろされる。
二人の前を素通りしていくタクシー。
「え?」
「あの男との関係を、イチから話してもらいます」
「……はっ」
不味い。朝職員室で睨んでたのまだ覚えてた!
「君はどうしてああも簡単に婚約者の前で他の男と」
「まってまって。話が長くなりそうだから、そこのカフェ入りましょう」
「そうですね」
結局、昔の思い出話を1時間話して。知冬に大好きと30分ほど語りかけ。
コーヒー1杯では申し訳ないとその店で夕飯を済ませる事になった。