しましまの恋、甘いジレンマ。
車に乗れって?何処へ行くの?何も聞いてないけど大丈夫?
慣れていない志真は警戒するが自分の働く学校の職員には違いないのだし、
これからを左右する人物になる、かもしれないのだからと乗り込んだ。
「…運転上手いですね右ハンドルなのに」
「慣れました」
「そうですか」
でもどうしよう、会話が成り立たない。
志真は誰とでも気さくに話が出来るタイプでもない。特に外国の人なんて。
何を話そうか。当り障りのない会話?
いきなり本題である遺産の話なんかしたら変に思われそうだし。
「ここでいいですか?」
「え?え、ええ。はい」
一人脳内で四苦八苦している所で突然車がとまる。
どうやら彼の目的地はカフェだったらしい。
志真が利用したことのない、存在も知らないようなオシャレな佇まい。
まずはお茶しようって事かな?
車からおりて、お店に入り店員さんに奥の席を案内してもらう。
席について、チラチラと周囲を確認したテオが軽いため息をして。
少し遠いところに居た店員を呼ぶ。
「俺コーヒー。そっちは?」
「え。え。……あ。はい。紅茶で」
何だか若干さっきまでと口調が違う気がするけど、飲み物を注文。
「じゃあさっそくだけど条件は?俺も無条件という訳にはいきませんから」
「……は。…はい」
あれ。やっぱり雰囲気が違う?彼が何を考えているのかわからない。
こっちはただただ挙動不審に視線を泳がせるばかり。
「なにか?」
「い、いえ。あの、テオ先生は」
「知冬でもいいですよ」
「え?」
「父親が日本人なので。こんな顔ですけど、知冬という名前もあるんですよ」
「……」
「本拠地はフランスですがね」