しましまの恋、甘いジレンマ。
落ち着け、落ち着け私。
見た目は完全に外国の人だけど、父親が日本人のハーフというだけ。
今のこのご時世それくらい珍しくはない。テレビでも雑誌でもよく観るし、
学校の生徒にも何名かハーフの子が確か居たと思う。
一見すると外国人のような名前の子だってたくさんいるわけで。
あれ論点がずれてる?
「そろそろいい?」
「あ。は、はい。すいません」
「俺は貴方の婚約者のフリをしたらいいわけですよね?」
「は、はい。…何時までかはちょっと今はわからないんですけど」
いつの間にかこの人を婚約者に見立てることで話が進んでいるけれど、
こちらからお願いした訳じゃないし、相手も偶然聞いたってくらいのもので。
そもそも今日あったばかりの人でどういう性格なのかもわかってない。
正直これであのおばさんが信じるかどうか怪しくなってきた。
それに自分とこの人。どうみても不釣合い。
向こうが主役のヒーローでこっちがその辺にいる端役。
間違っても私はヒロインじゃない。
「別にいいですよ。その辺は。で、報酬なんだけど」
「は、はい。おいくらほど…」
だけどガンガン押してくるので志真は引き返せない。
最初は明るくて優しい外国の先生のようなイメージを持っていたのに
いきなりぶち壊れた。いや、まだこの人の事を何も知らないわけだが。
嘘を引き受けてくれるなら相手は誰でもいいの私?
お金欲しさに目が眩んだ最低な人だ。
全面的な否定は出来ないけれど。
こうじゃない、私が望んだのはこんな感じじゃ…。
やっぱり自分には人を騙すことなんて出来ないのかもしれない。
「お金は要らない。家あると言ってましたよね?」
「あ、だ、だめです。家は」
「別に権利が欲しい訳じゃなくて、そこ見せてもらってもいい?」
「え?ええ、いい、ですけど」
騙す前に私騙されてない?
ああ、不安。