heart slip
heart1
「茜――――ーーッ!!」
……うるさい。
なんでいつもあいつは朝からハイテンションなの!?
ていうか近所迷惑。
「愛しの雄也くんが待ってるわよー」
お母さんのばかっ!!
そんなデカい声で言ったら、外まで聞こえちゃうでしょ!?
「もうっ!!何回言えばわかるのっ!?私と雄也は付き合ってないし!!」
私は今まで彼氏がいたことが一度もない。
それは今現在も変わらない。
私の家の下で叫んでるあいつは、彼氏でも何でもない。
雄也はただの幼なじみ。
雄也の家は私の家の右隣にあり、毎朝こうして私の名前を叫んで、私が来るのを待っている。
まったく、困るってば。
みんなバカップルだと思うでしょ!?
私は恐る恐る玄関のドアを開けた。
「茜ーッ!!おはよーッ!!」
私は日頃陸上部で鍛えた脚で全力で走った。
しかし、雄也はサッカー部。私がいくら頑張っても、勝てるわけない。
あぁ……。
追いつかれる……。