次期社長の甘い求婚
【Never give up 】 ※絶対にあきらめない
まるで海に浮かび、穏やかな波に揺られているようだった。

心地よい振動に、ぬくもり。


できればこのままずっと……と願ってしまうほど。


けれど無情にも、けたたましい電話の呼び出し音によって現実世界へと引き戻されてしまった。


「んっ……なに？」


耳障りな着信音に重い瞼を開けると、すっかり夜は明けており、朝陽が薄いレースカーテンから差し込んでいる。


徐々に覚醒していくと同時に、まだ夢の中じゃないかと錯覚してしまう。


「え、どこ？　……ここ」


自宅の天井より遥かに高く、寝ていたふかふかのベッドはどう見てもダブルサイズ。

そしてなにより周囲を見回せば、ここが自宅ではないと容易に理解できる。


しばし呆然と見回している間も、ベッドサイドにある電話が鳴り続けている。


まだまだ状況が飲み込めないところだけど、ここは電話に出るべきよね？


そう思い、恐る恐る受話器を取った。
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