次期社長の甘い求婚
神さんがなにを根拠にそんなことを言っているのか理解できない。


けれどなぜだろうか。

さっきから目頭が熱くて仕方ない。


根拠はないのかもしれない。
ただ感じただけなのかも。


それでも嬉しかった。
私のこと、理解してくれた気がして。


観察力が鋭い亜紀にさえ、こんなこと言われたことなかったのに。

なのにどうして神さんは、気づいてくれたのかな?


ときどき、意味もなく悲しくなるときがあるの。

無理して仕事頑張っているときもある。

ずっと平凡で幸せな生活がしたい――。それだけを願ってきた――苦しいほどに。


「だから悪いけど、美月のこと諦めるつもりないから。……覚えておいて。俺は本気で好きになった女しか下の名前で呼ばない主義だって」


甘く囁かれた言葉と共に、さらに強い力で手を握りしめられてしまった瞬間、ギュッと胸が締めつけられてしまった。


何も言えないよ。
胸が苦しくて、言葉が出て来ない。
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