次期社長の甘い求婚
神さんは皆の憧れの御曹司様だ。


散々冷たくされてきた職場の先輩にも、一昨日の話を聞いてか、またころっと手のひらを返してきたし。

それくらい影響力のある人だと思う。

存在はもちろん、神さん自身に魅力があると思うから。


神さんのことを少しだけ知れた今、尚更そう思ってしまうよ。


「そっか、なら安心だ。これでも跡取りだからさ。……社員に嫌われている社長じゃ話にならないだろ?」

「そう……ですね」


あまりに今日一日が楽しかったからか、現実に引き戻された気分だ。


神さんは我が社の御曹司様。……今は研修中だけど、いずれ社長の椅子に座る人なんだよね。


本当は私なんかが気軽に話せる人じゃないんだ。


気持ちが沈んでしまう中、神さんは探るように私を見据え、ゆっくりと言葉を選ぶように問いかけてきた。


「以前美月、言っていただろ? 俺に興味ない、好きになることは絶対にありえないって。……それってさ、なにか理由があるからじゃないのか?」
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