次期社長の甘い求婚
「それは……」

「美月が人を上辺だけで判断するようなやつには、見えないんだけど。……違う?」


“違う?”と聞いているくせに、どこか確信めいた目で私を見つめる彼に、ゴクリ生唾を飲み込んでしまう。


どうして神さんは、私のことを理解してしまうのだろうか。

亜紀以上に観察力が鋭いと思う。


ここで否定しても、ますます追及されそうな気がして白旗を上げた。


「神さんって、観察力鋭いですね。……最近驚かされています」


認めると、神さんは苦笑いしながら頬を掻いた。


「それはよく言われるかも。なぜか分かっちゃうんだよな。その人の言動や雰囲気でなんとなく。昔からよく両親や周囲の顔を見てきたからかもしれない。……見事に当てたから、美月の話を聞かせてくれる?」


優しい声色で問いかけてくる。

無理強いすることなく、私のペースでいいから話して欲しいと言わんばかりに。


話してもいいのか迷ったけれど、神さんだって苦い過去の話をしてくれたんだよね。


それに神さんなら、亜紀のように最後まで話しを聞いてくれるはず。


たった数日間であっという間に変わってしまった彼への気持ちに驚きつつも、ゆっくりと自分の生い立ちも含めて話していった。
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