次期社長の甘い求婚
なんせ心配そうに至近距離で私を見つめる彼に、肩を抱かれ密着した状態なのだから。


ちっ、近い近い!!


身体は硬直し、神さんの視線に答えることしかできない。


わずか数十秒の間の出来事だというのに、あっという間に私の顔は熱を帯びていく。


やっと神さんも今の状況に気づいてくれたのか、堪え切れなくなったように噴き出すと、すぐに身体を解放してくれた。


「ごめんごめん。でも危ないから美月はこっち」


いまだに顔の熱い私の腕を引くと、神さんは歩道の内側へ私を移動させると、満足したように微笑んだ。


「これですぐに美月を守れる」


あぁ、もうなにそれ。

そんなこと言われて、ときめかない人なんていない。


どうして神さんってば、いつもサラッとこっちが赤面しちゃうようなことを、言えちゃうのかな?


「早く行こう、遅刻する」


「はっ、はい」


それからはついていくだけで、精一杯だった。
胸の高鳴りを必死に抑えながら――。
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