次期社長の甘い求婚
「ちょっと小野寺さん、見たわよ~! 今朝も恭様と一緒に出勤だったでしょ?」

「いいなぁ、羨ましい」


この日の昼休み。

最近では代わる代わる庶務課の先輩はもちろん、他部署の同期や総務部の先輩達に、ランチに誘われる機会が増えている。

その理由はもちろん、神さんの話を聞くためだと思う。


けれど誰も神さんと仲良くしていることに関して、嫌がらせしたり陰口を叩く人はいなかった。

私にしてみればありがたいことだけど。


こうしてランチに誘われることで、他の課の人との交流も図れて、庶務課はなにかと他の課と絡むことがあるから、人脈じゃないけれど、顔見知りができると仕事がやりやすくなる。


「いいなぁ~あんな素敵な人が彼氏とか羨ましい」

「だよね。小野寺さんってまさに現代版のシンデレラじゃない」


盛り上がる先輩達を前に、曖昧に笑うばかり。


もちろん私と神さんは付き合ってなどいない。


これは神さんからの提案だった。

「俺と付き合っていることにしていた方が、嫌がらせとかされないと思うから」って。
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