次期社長の甘い求婚
「うわ、これは酷いですね」

「でしょ?」


資料室のドアを開けた瞬間、中の惨劇に唖然としてしまう。


いつもは棚に綺麗に保管されているはずの資料が、無残にも床に散らばっているのだ。


「この前、広報部の人達が急ぎで資料を探していたら、こうなっちゃったみたいで。……今の時期忙しいみたいで、整理を頼まれていたんだけど、すっかり忘れちゃっていて……」


「そうだったんですか」


片付けなら広報部がやるべきでは? と入社したての頃の私なら思っていた。

けれど仕事はお互い様だし、私達が他の部署に助けてもらうこともある。


特に鈴木主任の人望は厚く、よく他部署の人から頼まれる仕事も多い。

専ら雑用だったりするけれど、絶対NOとは言わない鈴木主任は、常に仕事を抱えている状況だ。……まぁ、その結果が今の彼。


けれどそこは彼の人柄なのか、決まって誰かが手を差し伸べる。
今の私みたいに。


「せっかく年度別にまとめてあったのに、これじゃ台無しですね」


散らばっている資料は、全てバラバラ。
これを元通りにするとなると、ひとりでは無理だ。
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