次期社長の甘い求婚
片思いしていたときも、ふたりっきりになれたら嬉しかったし、笑った顔にキュンとしたり。


でも神さんには、ちょっと違う。
一緒にいるだけで緊張して、胸が苦しくなる。


言動ひとつひとつに過剰に反応してしまうんだ。


同じ“好き”って感情なはずなのに、こんなに違うのはなぜだろうか……?


「……どうかした?」


すっかり手を止め考え込んでしまっていた私に、鈴木主任が声をかけてくれた瞬間、ハッと我に返った。


「すみません、ボーっとしちゃって。これ、ファイルにしまっていきますね」


拾い上げた資料をファイルにしまっていく。


少しすると鈴木主任もまた、拾った資料をファイルに戻していく。

お互い無言のまま片付けること数分、ふと鈴木主任の左手薬指に光る指輪の存在に気づいてしまった。


あれ……? 鈴木主任ってばいつの間に指輪を? 確か最近までしていなかったよね?


そんなことを思いながらまじまじと見てしまっていると、気づいた鈴木主任は照れ臭そうに右手で指輪に触れた。
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