次期社長の甘い求婚
神さんの言葉を信じたい。

けれどどうしても不安で怖いんだ。


一度手に入れた幸せを、もしかしたら手離さなくてはいけない日がくるのかもしれない、と思うと怖いんだ。


前屈みになり、体育座りし両腕で身体を押さえてしまう。


幼少期からずっと幸せになりたいと願っていた。


もしかしたら手に入れたいと思っていた幸せが、今目の前にあるのかもしれない。


なにも考えずに、手を伸ばすことができたらいいのにな。


それができない自分が、憎いとさえ思えてしまう。


もし、神さんが私と同じ一般社員だったら、なにも考えることなく自分の気持ちに素直になって、踏み出せることができたのだろうか……。


この日もまた、煮え切らない想いを抱えながら眠りに就いた。
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