次期社長の甘い求婚
同じ境遇で生きてきたとしても、悲観的にならずに済んだかもしれない。


父親がいなかろうと、母親が働いていなくても、周囲に何を言われても、きっと鈴木主任なら楽観的に捉えていたと思うから。


そこまで考えてふと気づく。


あぁ、だから私は鈴木主任に惹かれたのかもしれないと。


鈴木主任が家族にいたら、幸せになれたかもしれない。

彼と一緒にいられたら、毎日を楽しく過ごせたかもしれないから……。



妙に納得し、ストンと落ちる。


それと同時に、気づいてしまった。


私が鈴木主任に対する好きって感情は、なくなっていると。


「いやはや、信じられない……」


いまだにブツブツ言いながら、仕事を再開させる小川さん。


そんな彼女にそっと心の中で『ありがとう』と伝えた。


また一歩、前に進めた気がしたから。


小さく深呼吸をし、私も仕事を再開させた。


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