次期社長の甘い求婚
「やっと終わった」


データを保存し、背もたれに体重を預けホッとできたのは、定時を一時間過ぎた頃だった。


いつの間にか小川さんも他の同僚達も退社しており、庶務課に残っているのは私ひとりだけ。


残業皆無の庶務課では、当たり前の光景かもしれない。


「戸締りしなくちゃだよね、確か」


一番最後まで残ったのは、これが初めてだった。


勤務中に使用しているメモ帳を取り出し、最初の頃のページに目を通しながら席を立つ。


「えっと、まずは給湯室の確認と」


ひとり言を言いながら給湯室へと向かう。


ポットの電源などが切れていることを確認し、庶務課の窓の鍵が閉まっているかも確認。


配属された当初、教えてもらいまとめた確認事項を見ていく。


みんなのパソコンの電源も落ちているし、これで大丈夫。


確認を全て終え、帰り支度を始める。


荷物を全部鞄に詰め込み、最後に電気を消して庶務課を後にした。
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