次期社長の甘い求婚
そのまま神さんに引かれる形で向かう先は営業部。


繋がれたままの手が熱くなるばかりで、変に汗ばんでいないか心配になってしまう。


だからと言って繋がれた手を離したい、とは思わなかった。


それから少し足を進めたところで、見えてきた営業部のオフィス。

他のオフィスとは違い、この時間でも明かりが灯っている。


「あれ? まだ残っているのか」


呟くと、「シーっ」と人差し指を立てると、静かに近づいていく。

そんな神さんの言いつけを守るように、私もまた足音を立てぬよう歩を進めた。


すると次第に聞こえてきた声。


やはり誰か残っているようだ。


営業部の人が残っているなら、私はオフィスに入らないで待っていた方がいいよね。
そう判断し、神さんに声を掛けようとしたとき。


「マジでやってられねぇよな、あの御曹司様には」


営業部のオフィスから聞こえてきた陽気な声に、私も神さんの足も止まってしまった。


「そう言うなよ、御曹司様も大変なんだよ」


「なにが大変なんだよ。あっ! 営業所全員の人気を取るのに?」
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