次期社長の甘い求婚
神さんをバカにしたような会話に耳を疑ってしまう。


どうやら他に残っている社員はいないようで、ふたりの会話は鬱憤を晴らすようにますますヒートアップしていった。


「こっちはえらい迷惑だよな、研修だって理由でいい仕事ばかり取られて、下っ端の俺達に回ってくるのは、雑用ばっかだし」


「気遣ってよいしょしてんの、ぜってぇ気づいてねぇよな。あれで“俺って仕事できる”って勘違いしてんだぜ」

「同感!」


神さんの陰口のオンパレード。

そしてふたりで声を上げて笑っている。


あまりに一方的な陰口に、怒りが込み上げてくる。


ただ神さんの存在が面白くないだけだというのが、ふたりの会話から見てとれる。


たった数ヵ月間だったとはいえ、一緒に仕事している神さんはどう思っている……?


隣にいて手を繋いでいるというのに、彼の顔が見られなかった。


「あーあ、早く次の研修場所行ってくれねぇかな。女たちも騒ぎまくってて、迷惑だよな」


「いい気になっているんじゃねぇの? あの能無し御曹司」


神さんが動かない限り我慢しようとしていたけれど、さすがに限界だ。


彼のことを何も知らないくせにっ……!
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