次期社長の甘い求婚
いまだに『信じられない』と言いたそうに、まじまじと私を見下ろす彼に向かって、一度深呼吸をし向かい合った。


「神さんのことは、存じ上げております。けれどごめんなさい。私はあなたに興味など、微塵もありません」

「……は?」


目を見開き驚く彼に、トドメを刺した。


「他の女性社員はどうか知りませんが、私はあなたに残念ながらこれっぽっちも興味がありません。なので今後一切、こういう風に声を掛けて下さらないよう、お願いします」


深々と頭を下げるものの、彼は無反応。

ゆっくりと頭を上げ様子を窺うと、瞬きもせずに私を見下ろしていた。


そんなに意外だった? 世の中、私と同じように神さんのような人、タイプじゃない人だってたくさんいると思うんだけど。


それとも世の中の女性は皆自分のこと、嫌いなはずがないとでも思っていたの?


喉元まで出かかった言葉を呑み込む。


話を広げてどうするのよ。
これだけ言ったんだもの。きっともう絶対に声を掛けてくることはないはず。だったら長居は無用だ。
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