次期社長の甘い求婚
彼の手を強く掴み、駆け足で進んでいく。


「こう見えて私、お好み焼き焼くの自信あるんです。だから全部私に焼かせてくださいね」


走りながら振り返るも、神さんは困惑している様子。


ごめんなさい。私にできることなんて、何もないと思う。


さっきだって神さんに止められず、彼らに文句を言ったところで所詮庶務課の私は、「お前は関係ないだろ」とか言われて、言い負かされていたと思うから。


じゃあ私にできることは……?


それはいつもの私でいることだよね? 神さんと楽しい時間を共有すること。

さっきのことを少しの間でもいいから、神さんが忘れることができるように。


たくさん笑って美味しい物食べて、明日もまた頑張ろうと思えるように。


それが私にできることだよね。


神さんの手をしっかり握ったまま、目的のお店へと急いだ。




「では早速焼かせていただきますね」

「あっ、あぁ……」


あれから神さんとやってきたのは、よく庶務課のみんなや亜紀と訪れている、お好み焼きやもんじゃ焼きが食べられる飲食店。
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